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☆管理人:haschiken
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就職活動中の学生、「45年後…」を読む
今日から生まれかわった気で、ちゃんとした生活をおくろう! うぅ。一発目からこたえるセリフではじまる作品だ… 就職活動真っ只中の学生としては本当にこのセリフ、思わず自分の襟を正したくなる。 「ぼくドラ」25号の付録に満を持して掲載された、ドラえもんファンの間で伝説となっていた名作、「45年後…」 いつまでも知らないでは済ませられない、とそろそろやっと本格的に始めた就職活動。社会人にになる、ということ、考えようとすればするほど怖い、難しい。 5年後、10年後、25年後、45年後… 自分がどうなっているのか、はっきり言って想像することなんかできない。 では、どうありたいと思っているのか? それすら考えることは困難であり、勇気のいること。 僕はこの「45年後…」を読んだのは今回が初めてだが(こういう作品がある、ということを知ったのもつい1,2年前だった)、いまの僕がまさに人生の岐路にあり、何年後の自分だろうと会えるものなら会いたい、と思っているので、この話もまた自分にとってダイレクトなテーマの作品として味わうことができた。 (↑なんか文章おかしいがお許しを。うまくまとまらんかった) この作品が初掲載されたのは1985年の小学六年生九月号だそうな。 小学六年生といえば恐らく自我がある程度形成されてから、初めて直面する人生の岐路(とまではいかないにせよ、環境の大きな変化)といえるのではないか。その六年生たちに向けた作者からのメッセージが伝わってくる作品で、評判どおりの名作だった。 いやもうコレ本当に味わい深い作品で、今日手に入れてからもう十回ぐらいは読み返してるんだけど、ファンとしてずーっとのび太の人生を見てきた者にとっては本当にたまらない。 「ドラえもん」という漫画のある意味集大成と位置づけることが出来る作品だと思います。 ただ、話としては地味で、あまりドラえもんの歴史を知らない人が読んでも、「いい話だね」で終わってしまうかも。 そういう意味では、(こういう言い方は好きではないが)「通向けの」作品と言えるかもしれない。3月にアニメでも放送されるらしいけど、同じような理由であまり期待はできないかもね。原作をずっと読んでこそわかる場面がたくさんあると思うので。(そんなこと言い出したらほとんどがそうかもしれないけど) 以下、ストーリーを追いながらレビューしていくつもりなんでまだこの話を読んだことが無い人にはおすすめしません。僕の引用なんかでこのストーリーを知ってしまうのはもったいないです。 表紙、ちょっと不思議ですねぇ。 このおじさん、どう見てものび太に似てません。最初は 「えっ、これがのび太?」 てな感じでした。キテレツ斎さまに見える。 でもまぁ、よく見ると顔はのび太のパパに似てるので、なるほどなぁと思えるんだけど、なぜかロン毛なんだよね、初老ののび太。 ここで早くもちょっと脱線するけど、F先生に「定年退食」という恐ろしい短編があります。(なにが恐いって、最近のニュースを見てるとだんだんとこの世界に近づきつつあるような気がする) で、この「定年退食」に登場する主人公の老人がのび太似の顔をしてるのと、その世界(いつか未来)では男性は長髪が標準で、若者達がそれに反抗するために無髪(要するに丸刈り)スタイルにしている、という設定をふと思い出しました。この作品では、男性の髪の毛の規範を正反対にすることで、パラダイムが変わった時代である、ということを描いているんだと思うけど。 「45年後…」ののび太もとにかくロン毛でした。 さて、本題に戻ります。 一コマめ、 「年に二度か三度の、のび太大反省の日がやってきた!」 これを見るとつくづく、この時期(80年代も半ば)にはドラえもんの世界、というものが完成していたんだなぁ、と思う。これ以降も、たとえばのび太が裏山にいくことなんかが、ごくあたりまえのこととして描かれている。この話はこういうごく当たり前の、小学生時代ののび太の生活というものがものすごい重要な要素なだけに、細かく描かれているとうれしい。 あと注目すべきなのは、この話のなかでドラえもんはほとんどなにもしてない、っていうこと。ほとんど二人ののび太(とくに初老ののび太)の行動を追うことでストーリーが展開する。ドラえもんがやったことといえばいれかえロープをとってきただけ。あとは満足そうにニコニコ笑いながら二人ののび太のあとをついてくるだけ。この表情、いいですねぇ。 いや、読んでるほうも、昔日を懐かしむのび太の様子をみると微笑んでしまう。ハジメテンを飲んだわけでもないのにしずちゃんに、ドラマチックガスをかけられたわけでもないのにママのお説教に、ありがたみわかり機で断食してたわけでもないのにママの手料理に、感激するのび太。その感激はいままでとはちがい、道具の影響ではなく、のび太自身の心から素直に発せられる。読者としての感動もまた一味違う。 同じようなテーマをいくらか悲劇的な設定で描いた短編で、「未来ドロボウ」というのがあるけど、こっちはあくまでドラえもん、つかのまの「若さ」を楽しむのび太が本当に嬉しそう。悪口を浴びせられながらも満面の笑みでボールを追いかける姿は、ヘソリンガス吸ってるみたいでちょっと怖い気がしないでもないが… ジャイアン、スネ夫はその歳になるとどうしてるんだろう? まだのび太と交流はあるんだろうか、 そしてしずちゃんと出会う。 ノビスケが月へハネムーンへ行ったという。 これ、すごいよ。 のび太、ついにやったね。 以前(こことかここ)、ドラえもんという漫画作品の最終的な目的はのび太の幸せな未来であり、それを象徴するのがしずちゃんとの結婚である、ということは述べた。つまり、「結婚前夜」をはじめとする未来のエピソードによって、ドラえもんの使命はとりあえず達成されたと言えるのだ。 が、今回はさらにその上に進んだのび太が登場している。 自分が社会人としてひとり立ちしただけでなく、自分の息子をひとりの社会人として育て上げたのだ。 のび太は「りっぱなおとな」になっていたのだ。 この作品がドラえもんの集大成的作品である、というのはこういうことから。 その「初老ののび太」の最後のセリフは、「結婚前夜」におけるしずちゃんのパパのセリフとならんで、作者からのメッセージがもっとも強く出ているものだろう。 きみはこれからも何度もつまづく。 小学六年生、この歳を最後にドラえもんを(一応雑誌で読むのは)卒業する子供たち、中学校という新たな社会へ飛び込んでいく子供たちにむけての素晴らしい励ましが、あののび太の口から語られる。 つまづく、しかしそのたびに立ち直る強さ。 その「強さ」を自分のなかに育まないとね。 いやぁ、ドラえもんファンとしても、就活生としても、本当に感慨深い作品でした。 ※どうでもいいけど、最後のコマ、やたら本が多いねww ↓ランキング参加中
by haschiken
| 2005-02-21 22:17
| その他藤子F関連
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